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忘れられた緊急事態:原稿

よたか2005.10.06 04:02:00

ユニセフから使用許可が出ましたので、文字原稿を掲載します。(出典:日本ユニセフ協会発行『ユニセフ・ニュース』207号9〜11ページ)写真原稿については、授業当日配布いたします。
<タイトル>
忘れられた緊急事態 Forgotten Emergencies in Africa

<リード>
報道されることもなく、静かに命を落としていく子どもたち

<本文1>
2005年12月に起きたインドネシアスマトラ島起きの地震と津波は、今でも人々の脳裏に深く刻まれている未曾有の出来事です。世界中のメディアがこれをニュースとして取り上げ、「少しでも支援を差し伸べたい」という多くの善意の結果、多くの支援が集まりました。
でもこうしてメディアの脚光を浴びて、集中的に募金や支援が集まる地域もあれば、ニュースに取り上げられうこともなく、あるいはニュースに取り上げられても人々の関心を惹かぬまま、静かに忘れさられていく緊急事態がたくさんあります。ユニセフは緊急人道支援アピールとしてアフリカ、ヨーロッパ、中東を中心に33ヶ国、7億6,300万米ドルの支援を、「忘れられた緊急事態」として呼びかけています。その3分の2がアフリカに集中しています。さらに悪いことにメディアもこれらの国々の様子を充分に伝えているとは言えません。
こうした国々では、世界中の人たちに知られぬまま(実は支援があれば助かるはずなのに)、多くの子どもたちが静かに命を閉じています。自然災害が繰り返される地域、紛争が繰り返され、終わる兆しさえない地域、いろいろな事情の中で、小さな命が奪われて行っているのです。子どもたちは、自分がなぜ過酷な状況に追い込まれているのか、なぜ突然家や家族が奪われてしまうのかが分りません。罪はないのに、一番過酷な状況に追い込まれてしまうのが、か弱く抵抗力のない子どもたちなのです。知識がないために、人身売買のワナにはまったり、子ども買春や性的搾取・暴力の対象となったり、食事や栄養がとれず、栄養不良になったり抵抗力をなくして感染症にかかったりします。
ユニセフでは、日頃、報道されないこうした子どもたちのにも、地道に支援の手を差し伸べていますが、資金がまだまだ不足しています。今一度、ニュースの陰に隠れて存在する「現実」に目を向けていただき、ご支援をお願いしたいと思います。
現在、「忘れられた緊急事態」にある国々の一例をご紹介します。私たちにできること、それは少しでも、現実を知り、それに対して「行動」を起こすこと。ひとりひとりの行動が大きな力となります。そう、スマトラ沖地震・津波の被害の報に接し、多くの支援を送ってくださったみなさまの力が「復興への希望」となっているように…。
子どもたちは「今」支援を必要としています。

<本文2>
「アフリカを見る目は厳しい。政府の汚職、武力紛争、不信感。ドナーから一般大衆まで、正直疲れたと思っている人たちもいるようだ。でも、その陰で罪のない子どもたちが不必要に命を落としている現実がある。それも難しいものではない。できること、やらなければならないことがある。それを私たちは忘れてはいけない。」こう訴えるのはユニセフのエチオピア事務所代表、ビヨン・ルングウィストです。
ユニセフの第一優先は被害に遭い、保護を必要としている子どもたちです。武力紛争、自然災害、貧困、暴力、搾取の犠牲になっている子ども、障害のある子どもたちです。緊急事態にある国において、ユニセフは女性や子どもの基本的ニーズが満たされるように努力し、基本的人権が保護されるよう努力しています。
緊急事態にある国では、おうおうにして支援を届けるのが難しくなります。例えば、武装勢力が支援を阻止していたり、道路や橋が破壊されていたり、地雷が埋められているために通行が不可能であったりします。もちろん地理的条件や天候などの条件で支援がなかなか届けられない場合もあります。
武力紛争時に死ぬ子どもたちは、武力紛争そのもので命を落とすのではなく、たいがいが基本的な保健サービスが断ち切られたり、食糧、安全な飲み水、衛生的な環境(トイレなど)が手に入らないために命を落としているのです。
だからこそ、ユニセフは、こうした基本的な保健サービスや、食糧、安全な飲み水、衛生的な環境を提供すること、そしていち早く「ふつうの生活を取り戻し、心の安定がとりもどせるように」教育に力を入れて、緊急支援を行っています。

<記事1>
ニジェール:干ばつとイナゴの被害
「おなかが空きすぎて我慢ができなかったんだ。都会だったら何かしらある…そう思ったら、いつの間にか足が街に向いていた…」飢餓の村を逃れ、ひとり街に出てきてストリートチルドレンとして生き始めた11歳のスーレマネ君の話です。この子の故郷に出向いてみると、女性が誰ひとり村にはいませんでした。理由を尋ねると「家族のために食べられそうな葉っぱをかき集めに行っているからだ」と言ってます。緊急時のために穀物をとっておく「穀物銀行」にも穀物はなくなってしまった状態なのです。
被災者:推定330万人、うち5歳未満児80万人。
ユニセフがしていること:緊急支援として614万トンの穀物を提供しましたが、まだまだ不足しています。
<写真101:主食の粟の畑の中を歩く栄養失調の少年。(c)UNICEF/HQ05-1284/Radhika Chalasani>

<記事2>
ジンバブエ:「ゴミ清掃作戦」という政策のもとで
ジンバブエ政府は年をきれいにし、闇市場を一掃するスラムの強制撤去、取り壊し政策を推進しています。その政策の陰で、家を焼かれ、住む場所を失った人たちがたくさん出ています。
「残っているものを守らなければいけないので、学校にもいけないんだ」と語るのは13歳のシリンコ君。おかげで試験も受けられません。守っているのは、ベッド、食器棚、料理用のナベと釜。「教科書も焼かれてしまったから、行けなくてちょうどいいのかも」5月から9月まで冬を迎えるジンバブエでは、これからが心配です。「みんな風邪をひいている。今朝は目が覚めたら毛布に霜がおりていたよ…」彼は今、ユニセフが提供した2枚の毛布だけを頼りに寝ています。
影響を受けている人:この政策のもとで家を失った人推定50万人。うち子どもは推定15万人。
ユニセフがしていること:毛布1万枚を被災者に提供。そのほかにも仮のテントが張れるようにビニールシートを提供。水を入れる容器、バケツ調理器具も提供し、毎日8万リットルの水を提供しています。
<写真102:(c)UNICEF>

<記事3>
ウガンダ:紛争の中で「夜間避難」する子どもたち
19年も続く紛争がもたらしている悲劇。それは、反政府軍による子どもの拉致。子どもたちは意思に反して拉致され、「子どもの兵士」あるいは、「性的奴隷」として、反政府軍のもとで働かされています。拉致を恐れる村人たちは、子どもたちを夜の間だけ、街に避難させています。夜間に村を襲われ、拉致される子どもが多いからです。「夜間避難」する子どもの数は推定4万人と言われています。
11歳になるヴィッキーは町に避難して眠るように言われてますが、なぜそうしなければいけないのか、彼女には分ってません。9歳になるアンドリューも毛布とリュックサックを持たされ、毎晩街に避難しては翌日朝6時に家に帰る生活を送っています。
影響を受けている人:北部の紛争では140万人が避難民となっています。うち80%は女性と子ども。2002年以来12,000人の子どもが拉致されました。「夜間避難」する子どもの数は推定4万人。
ユニセフがしていること:子どもたちの多くは路上で寝ていますが、ユニセフでは「より安全」な場所を確保する努力をしています。「家から避難場所へ移動する際の安全の確保、避難先の環境の改善、水と衛生の確保、そしてより確実な保護ができるようユニセフではがんばっています」とはユニセフの子どもの保護担当官の話です。
<写真103:ユニセフが支援するシェルターで夜を明かす子どもたち。(c)UNICEF/HQ04-0257/Mariella Furrer>

<記事4>
トーゴ(西アフリカ):人身売買
「私は盗まれたの」と話すのはエッシー、15歳(推定)。10歳から13歳までの過去を振り返って語る彼女の目には涙が込み上げている。「アメリカに行くんだよ」と父親に言われた彼女は、ほうぼうの家を転々とし、「家事労働」を叩き込まれました。挙句の果てに乗った飛行機はアメリカではなく、中央アフリカ共和国のバンギーに向かいました。朝5時から始まる家事労働。すべてが終わらないと食事にはありつけません。文句をつけたのがきっかけで鞭打ち、アイロンによる強打が始まりました。何度も逃げ出し、警察に駆け込みましたが、いつも連れ戻されました。最後には近所の人のつてで、地元の名士の娘さんに助けられました。ユニセフの支援を受けてやっと父親のもとに帰ったエッシー。彼女は西アフリカ地域で国を超えて人身売買される数万人の子どもたちのひとりに過ぎません。伝統的なこととして子どもを親戚などに「働き」に出させる風習が残る地域。子どもの権利の侵害がさまざまな面で行われているのです。
犠牲になっている子どもの数:西アフリカ地域だけで数万人
ユニセフがしていること:人身売買を防ぐ国を超えた監視を各国に呼びかけ、被害にあった子どもたちの保護・支援、カウンセリングを行っています。
<写真104:お父さんとの再会は忘れられない。泣きながら迎えてくれたお父さん。こんなことになると分かっていたら、ぜったい私を家から出さなかったはずだ─とエッシー。(c)UNICEF/Glacomo Pirozzi>

<記事5>
エチオピア:慢性的な栄養不良にある子どもたち
重篤な栄養不良に陥っていた4歳のテステファイエ君。「保護センターに子どもを連れて行くようにいわれました。」とテステファイエ君の母親。「あまりにぐったりしていたので、もうだめだと思いました。でも15日間、センターにいたら持ち直して、それ以来、毎週欠かさずセンターに行き、食糧と石鹸を貰うようにしています。2ヶ月で3キロも体重が増えたんですよ。ほっとしています。これでこの子も生き延びることができます!」
子どもたちの状況:このまま治療が受けられないと、年末までに17万人の子どもたちが重い栄養不良で命を落としてしまうことになります。
ユニセフがしていること:WFP(世界食糧計画)とエチオピア政府とのパートナーシップで、ユニセフは困難な状況にいる子どもたちへ包括的な支援を行っています。このプログラムでは、栄養不良の子どもを見つけ出すスクリーニング作業とその治療のほか、地域の子どもたちの寄生虫駆除(虫下しの配布)、ビタミンAの補給、はしかの追加予防接種などを行っています。
<写真105:(c)UNICEF/HQ05-0638/Boris Heger>

<囲み1>
ユニセフの第一優先は「子ども」です(ここ10年の推定値)
武力紛争で命を落とした子ども→200万人
障害を被ったり重症の傷を負った子ども→400万〜600万人
家を追われた子ども→2,000万人
孤児になったり親とはぐれてしまった子ども→100万人以上
難民・避難民の大半は→子どもや女性
HIV/エイズで親を失った子ども→1,500万人

<囲み2>
日本ユニセフ協会では、下記の口座でアフリカ地域での緊急活動に対する募金を受け付けています。みなさまの温かなご支援をお願い申し上げます。
郵便口座:00190-5-31000
口座名義:(財)日本ユニセフ協会*通信欄に「アフリカ」と明記してください。

<写真106:(c)UNICEF/HQ05-1026/Radhika Chalasani>1ページ用メインイメージ
<写真107:(c)UNICEF NIGER/Kent Page>1ページ用サブイメージ
<写真108:(c)UNICEF>1ページ用サブイメージ
<写真109:(c)UNICEF/HQ05-1285/Radhika Chalasani>1ページ用サブイメージ

<出典表記>
出典:日本ユニセフ協会発行『ユニセフ・ニュース』207号9〜11ページ