よたか2012.06.16 12:21:29
この話は娘にも好評でしたので、ブログにもアップしちゃいます。===============
あたしだって、女の子だから、花嫁さんになりたい。
キレイな花嫁さんになりたい。
そして、結婚式して、しあわせになりたい。
でもね、わからない事がある。
おとうさんと、おかあさんは1回だけだけど、
2回も3回も結婚式してる人がいるみたい。
そんな人はきっと、ヨクバリだとおもうの。
1回でもしあわせなのに、そんなに何回もしちゃったら、
チョウちょう、しあわせだよね。
あたしも、10回くらい結婚式してみようかな。
学校で、みんなに言った。
「すごいよ。そうだよね」
「あたしも、何回も結婚式する」
そんな感じで、みんな言ってくれた。
少し嬉しくなって、担任の女の先生にも言ったの。
だけど、先生は少しコマッタ顔をした。
「回数がすべてじゃない!」
大きな声で、それだけ言うと、どこかに行っちゃった。
そんな事言われても、わかんない。
家に帰って、おとうさんにも言った。
「あたし10回くらい結婚して、チョウちょう、しあわせになるの」
「そんなに何回も結婚式すると、おとうさんすり切れちゃうよ」
おとうさんは、笑いながら、そう言った。
「おとうさん、すこし、すりきれた方がいいよ」
おとうさんに言うと、わたしをひざの上にのせて、ギュッて抱きしめてくれた。
「そんなに先の事、言ってないで、いまはお父さんのところにいておくれ」
おとうさんの言い方がとても、やさしかった。
「うん。いまはこのままでいいや」って言うと、
お父さんはまた、やさしい笑顔で笑ってくれる。
すこし丸い、おとうさんのお腹に、しあわせがつまっている気がする。
おとうさんに抱きついていると、おかあさんがやって来た。
もう、どうでもよくなったけど、同じ事を言ってみた。
「10回くらい結婚したら、チョウちょう、しあわせになれるの?」
おかあさんは、口だけで笑って答えてくれた。
「花嫁のドレスって白いでしょ」
「うん」
「でもね、回数を重ねるごとに、少しずつ汚れて行くの」
「え? そうなの?」
「10回も繰り返すと、汚れきって、黒い花嫁になっちゃうかもね……」
おかあさんの目が、ジッと私を見てる。
おかあさんの口が、形を変えずに笑ってる。
どうやら、結婚式は、一回でいいらしい。
おかあさんの顔を見て、なんとなくわかった。
ところで、あとでわかった事なんだけど、
担任の先生は、2回目が終わったばかりらしかった。