よたか2011.06.29 11:26:20
ピクシブで開催された「ローソン小説」に応募した作品なんですけど、残念ながら選外でした。超短編ですので、気が向いたら読んでくださいまし。
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わたしの部屋の窓の外、片側2車線のおおきな道路。
結構夜遅くまでうるさい。
生まれてからずっとなので、まぁ、慣れてるんだけど、
最近、特にうるさくなった。
半年前まで、道路の反対側、信号渡ってすぐの所にあった、喫茶店。
儲かってなさそうだけど、それなりに雰囲気もあって、常連さんも多そうだったの。
ある日、喫茶店、閉まってるなぁって思ってたら、
いつの間にかコンビニになってた。
例の青と白のツートンカラーの店。
きらい…。
あの店ができてからさ、うるさいの。
駐車場でね、大声あげる人とかいるし。
うちの家、野球場の近くなんで、ナイターの後とか最悪。
でも、それ以上に気に入らないのは、
喫茶店のお兄さんが、いなくなった事。
そりゃ、まだ喫茶店とか行かないから、
話とかした事ないし、きっと、わたしの事なんて知らない。
窓からながめて、「かっこいい」「あぁお兄さん居る。」とか思うだけだったし、
もう会えない…、ていうか、見られないと思うと、ちょっと切ない。
あーっ、なんでコンビニなんて、できちゃったの?
つぶれちゃえ!
おにいちゃんは「便利になったからいいじゃん」って、
いたいけな乙女心を、逆なでする様な事、平気で言ってる。余計に頭に来る。
2階の部屋、机に向かうと、向かいに喫茶店のカウンターがよく見える。
2.0の視力を使えば、カウンターの向こうのお兄さんがよく見える。
勉強が好きなわけじゃないけど、それだけで机に向かえる。
成績下がったら、コンビニのせいだからね!
乙女の楽しみを奪った、憎むべきコンビニへは絶対行かない。
どうしても用事がある時は、駅の近くまで行っちゃう。
へんっだ!つぶれちゃえ!
とは言う物の、やっぱり便利なので、100年に一回くらいは、
嫌いな青と白のコンビニに行く事もある。
でも、いるものしか買わない。
200円以上使ってやるもんか!
ある日、お父さんが「アイス買ってきて」ってお金をくれた。
アイスかぁ〜。
駅前まで行くと、アイスが溶けそうなので、仕方なく、嫌いなコンビニに行く事にする。
「いらっしゃいませ〜」
へん、愛想よくしてもダメだかんね。
好きになってやらないんだもん。
家族4人分のアイスを買う。
お母さんは、あずきバー。
おにいちゃんは、ガリガリするやつ。
お父さんは…。最中アイスでいいや。
えっと、わたしは、っと、「生キャラメルアイス」がいいな。
おいしそう!
でも、このコンビニは嫌いだけど。
アイス4つもってレジへ行く。
いく。
い…く…。
いた!
お兄さんがいた。
顔写真付きの名札。
名前までわかっちゃった。
どうして、星座と血液型は書いてないの?
「いらっしゃいませ、こちら4点ですね?」
「はい。」
「お会計540円になります。」
「はい。」
「ちょうどお預かりします。」
「はい。」
「ありがとうございました。またお願いします。」
「はい。」
息が詰まって動けない。
「どうかした?」
「喫茶店のお兄さん…?」
やっと、口をついて出たのはそれだけ。
「そうだよ。よく知ってるね。」
「うん…。」
「ありがとう。また来てね。」
「うん…。」
アイスの入った袋を抱えて、コンビニの自動扉をくぐって振り返る。
ローソン…。
そうか、ココに来るとまたお兄さんに会える。
ローソン。
ちょっと好きになったかも。
信号を渡り、アイスの袋をお母さんにわたす。
「あら?ちょっと溶けてない?」
あっ、抱きしめすぎた…。
いつもより、ちょっとドキドキの、私の鼓動で、
アイスが溶けちゃったのかも…。
なんちゃって…。
「自分のだけ安い。」と言って、怒るおにいちゃんから、
守りとおして、食べ切った「生キャラメルアイス」は格別!
お父さんも、お母さんも「おいしい」って言ってくれたのに、
おにいちゃん、怒こりっぽいったら、ありゃしない。
あんなんだから、彼女いないんだ。
部屋にもどり、窓から、ローソンを見る。
影になっているので、2.0の視力でもお兄さんの姿は見えない。
残念…。
あのコンビニ、乙女心がわかってない。
詰めが甘いわね。