よたか2016.12.05 04:37:49
近くのプールの利用時間が変わってた。ちょっと前までは19時までだったのに、18時までになってた。
そんな事も知らずに、実業団のバスケの試合見てたり、マイペースでトレーニングをしていて、プールの受付についたのは17:05だった。
「あと1時間もありませんけど、よろしいでしょうか?」
受付の女の子が申し訳なさそうに、柔らかに笑う。
「18:00ギリまで泳いでていい?」そう聞くと、
「いえ、18:00には更衣室から出ていただかないと……」笑顔がちょっと小さくなった。
「わかりました。全力で40分泳いできます」そう言ってプールへ向った。
プールを使っているのはもう10人もいない。
延々と泳ぎつづけるコースには3人ほど。私よりちょっと遅い感じの人ばかり。
泳いでて邪魔になる事もないかと思ってそのまま泳ぎはじめた。
私は左側で呼吸をするのだけど、今日は左肩のヌケが悪い。
トレーニングで左側が少し疲れてしまったからかな?
ターンした後も少しぶれている感じがするので、上腕から背筋に掛けて疲れているんだと思った。
そんな自己分析をしながら泳いでた。
前はターンするびに距離を数えていたけど、焦って泳ぎが雑になる感じがするので辞めた。
その代わり、体のバランスや、腰とか膝の具合を確認したり、手が着水するときの角度なんかを考えて泳ぐようにした。
別にもっと他の事を考えてもいいと思うけど、他のスイマーにぶつかりそうだから、泳いでいる時は泳ぎに集中する事にした。
腰が痛いと思ったら足の位置を下げて負担を減らし、膝が痛かったらキックの回数を増やして可動範囲を狭くする。
今回は左腕なので、意識的にローリングを大きくした。
ローリングを大きくすると、呼吸は楽なんだけどスピードが落ちる。
だけど、今日は指先の着水がとてもキレイに決まってる感じがする。
シリコン製のスイムキャップが水を切る音が聞える。
腰のあたりで腕を抜いた時の音が聞える。
指先が着水した時の音がかすかに聞える。
ほとんど泡を掴んでいないので、きっと調子いいんだと思った。
他にはまったく音がしない。ただ、自分が泳いでいるときの音だけが聞えてくる。
呼吸も減ってる。4ストローク1ブレスがこんなに続くのは本当に珍しい。
誰にも邪魔されないからターンもスムーズにできる。
あれ? 誰にもじゃまされない? というか、誰もいない?
息継ぎの時に左を見ると誰もいない。
右側で息継ぎしても誰もいなかった。
25メートルプールを1人で泳いでた。
どうりで自分の水音しかしないはずだ。
ちょっと気持ちよかった。
ターンしてから時計を見ると17:45を少し回ったところ。
いくらなんでももう上がらないと着替えられないかな。
せっかく調子良かったけど、今日はもう帰る事にした。
プールサイドに手を掛けて、軽くジャンプ。バタ足して腰を捻って座った。もう『エーデルワイス』が流れていた。
監視員さんのほっとした笑顔。
ちゃんと「ありがとうございました」と響くような声でお礼を行って更衣室に向っていると、「おつかれさまでした」といつもより大きな声が返ってきた。
少し嬉しくなって、一度振り向いてお辞儀をした。
下がった体温を上げるために、体中の血液が駆け巡っているのを感じながら、心地よい疲労感を楽しんだ。