よたか2009.06.23 07:43:20
最近、自分には趣味が少ないと気がつきました。そうねぇサッカーには行くし、コーラスにも参加してるけど、休みの日は旅行に行くでもない、映画もチケット代がもったいないので行く気になれない。酒も飲まないし、女遊びもしない。
なんとなくTOTOはやるけど、基本的に賭け事も嫌い。
そんなんだから「死神の精度 」が映画化されているのを知ってるはずがありません。
息子が学校から持って帰った学校のプリントにこの本の紹介文が掲載されていたので、何となく読んでいると「その本お薦め」といって、6つのオムニバスの文庫本をぶっきらぼうに差し出す息子。
きっと「読め」と言っているのだろう。そんな訳で読んでみました。
いろんな話で登場して、作者たちの好き勝手に解釈されている「死神」。きっとこんなに便利な題材は他にないのでしょう。
名前こそ「神」とつくものの、絶対的な崇拝の対象である事も少なく、少々「擬人化」しても許されそうだし、人間を超えた存在なので、作者の好き勝手なルールーで設定する事もできる。
もっともそれぞれの話の中で作者は「神」なのだからそれでいいのかもしれませんが…。
さて今回は、事故で死ぬ間際の人間の観察をサラリーマン的な立場で仕事を黙々とこなす死神。この物語の神様は、人間の寿命と事故とは厳密に分けて考えていきたいようです。
話に味付けをする為にはこの設定はとても重要なのですが、読んでいて気になる時が何回かあります。
ヤクザの抗争に絶対死なない日が存在してたり、病気で残り少ない命である事を知らずに事故で死んだり、どうしてもこの設定がチープに思えて仕方ありません。
それでも、内気なクレーム係の女性が歌手としてデビューする最初の話、タイトルにもなった「死神の精度」と子どもの時に誘拐され、強いトラウマを持ち人を殺してしまう青年の話「旅路と死神」はとても面白く読ませていただきました。
内気なクレーム処理係の女性が「指名するクレーマー」に悩み、そばに寄ってくる死神にほのかな恋心を寄せるものの、死神は仕事なので、素っ気なくかわしてしまう。
きっと彼女の人生はそんな事の繰り返しダッタのではないかと思わず想像してしまいます。
クレーマーとなった「音楽プロデューサー」がわざとらしいといえなくもありませんが、内気な女性が歌手へと成長する姿を想像して死を見送る事に決めた死神の無責任さ。
人にとってとっても大きな問題である生死なんて以外とこんなものなのかもしれません。
旅路と死神で登場する青年。過去のトラウマと思い込みと強さから思わず人を殺してしまう。彼自身の命の残りが短い中、全てを知った事はきっと彼にとって幸せだったに違いありません。
この話、彼が事実を知るところまでは書いてますが、その後の事は書かれておらず、その後の事をいろいろ想像してしまます。
死ぬ前に、自首して被害者に謝罪してほしいし、思わず刺してしまった母親にも謝罪と感謝の言葉を告げてほしい。
でも彼にそこまでの時間が残っているのかどうか、帰りにラーメン屋に寄る前に事故で死んでしまうかもしれない。
いつ、ふっと訪れるかも知れない死を、真正面から受け入れる事が出来る人間なんてそうそう居ないと思いますが、無表情な死神を使って死を「あたりまえ」の事だと、全編を通して訴えているような気がしました。
死神の精度 (文春文庫)